愛知県一宮市は10月から、振り込め詐欺などに使われた電話番号の着信を拒否で きる機器「迷惑電話チェッカー」を試験導入することを決めた。高齢者をねらった振 り込め詐欺は後を絶たず、市は高齢者がいる世帯を中心に1千台を無料で配り、1年か けて効果を検証する。
この機器は名古屋市中区のシステム開発会社ト ビラシステムズと、通信会社ウィルコムが共同で開発。トビラシステムズによると、 東京都西東京市でも試験的に導入しているという。
仕組みは、電話がかかっ てくると、実際に詐欺被害に利用された番号約2万件が登録されたデータベース(DB)と 照会。これらのデータは、警視庁や消費生活センターなどの公的機関やこれまでに利 用者から報告のあった番号などがもとになっている。
該当すると赤ランプな どで警告。音声でも「迷惑電話の恐れがあります」と知らせる。該当の場合は、電話 の着信音は鳴らない。
また、DBにない番号でも、利用者が個別に迷惑と判断 した場合、新たに登録することができる。複数の利用者が同じ番号を迷惑と判断した 場合、DBにも登録される。
一宮市は今年、すでに11件、総額約6300万円の詐 欺被害報告があった。機器導入は消費者庁のモデル事業となり、総事業費1千万円全額 を国が負担する。
検証期間は来年3月末までだが、その後も来年9月までは市 民が無料で利用できるという。一宮市の担当者は「蓄積されたDBが全国的に共有でき れば、被害を減らせる可能性もある」と期待する。
警視庁によると、振り込め詐欺は今年1~6月、全国で4037件認知され、前年同期 より約5割増えた。被害総額は約107億円で前年同期より約7割増えている。愛知県警に よると、県内認知件数は130件(前年同期比12件増)で、被害総額は約4億6千万円と約 2.7倍に増えた。高額の被害が目立っている。
一宮市では今月19日、80代の女 性が警察官を名乗る男らから現金1千万円をだまし取られる被害があったほか、4月19 日には80代の男性が1800万円を取られた。いずれも被害者が現金を手渡していたとい う。高額被害が目立っているのは、こうした現金の「手渡し型」手法が増え、現金自 動出入機(ATM)の取り扱い限度を超えた額がだまし取られているためだという。
朝日新聞 朝刊 2013年(平成25年)8月27日 火曜日