お年寄りを狙った振り込め詐欺などが増える中、愛知県一宮市は、詐欺で使われた電話番号からの着信を自動的に拒否できる専用機器「迷惑電話チェッカー」を使い、撃退効果を確かめる実験を今秋から始める。千戸の高齢者宅などに機器を配り来年三月まで実施する。自治体の試験導入は、既に一部実験を始めた東京都の二区市以外で初めて。
専用機器は名古屋市中区のベンチャー企業「トビラシステムズ」が、通信大手ウィルコムと共同で開発。電話機に接続すると、過去におれおれ詐欺や投資詐欺などに使われた電話番号を二万件蓄積したデータベース(DB)と照合し、登録された番号からの着信を自動的にブロックする。DB未登録の不審な電話を受けた場合、専用ボタンで通報してDBに追加登録できる。
愛知県警などによると、一宮市内の高齢者を狙った詐欺は今年十一件、被害総額六千三百万円に上り、県内でも有数の多さ。多発する被害を防ごうと、市が試験導入を決めた。
消費者庁のモデル事業として全額補助を受けて実施。十月から参加する家庭を募り、来年三月末まで専用機器を各戸に一台ずつ無料貸与する。一戸当たり月額七百円のウィルコムの利用料も無料になる。参加した家庭にアンケートし、詐欺電話の撃退効果や使い勝手などを調べ、防犯対策に約立てる。
東京都では西東京市七月から六十歳以上、杉並区が今月から七十歳以上のいる世帯を対象に一部実験を始め、募集も続けている。
警察庁がまとめた振り込め詐欺などの一 ~ 六月の被害は全国で約二百十一億七千万円。昨年同期より五十六億三千万円(36.2%)増加し、上半期で過去最悪となった。
背景にあるのが、詐欺の手口の変化。金融機関は振り込め詐欺防止策として、現金自動預払機(ATM)での振込み限度額を九十九万円などに設定するようになった。
しかし、その後は「手渡し型」の詐欺が増加。犯人が警察職員や息子を装って「捜査の営業で講座が使えなくなる。仮口座に移しましょう」「会社に損させた」などと電話をかけ、駅などで待ち合わせ、代理を名乗る人物が現金を受け取るケースが目立つ。
振り込め詐欺には、親族などを名乗ってだまし取る「おれおれ詐欺」のほか、公的機関の職員をかたる「還付金詐欺」やインターネットのサイトの「架空請求詐欺」、虚偽の融資話を持ちかける「融資保証金詐欺」などもある。
中日新聞 朝刊 2013年(平成25年)8月26日 月曜日