迷惑電話(振り込め詐欺等)・営業電話(勧誘電話・セールス電話)を自動で着信拒否 トビラフォンは未知の迷惑電話も着信拒否(迷惑電話フィルタ)できます。

中日新聞朝刊(三河版)


こころは三河 私の古里

振り込め詐欺撃退装置を開発 明田 篤さん (34)


 私が開発した装置は、固定電話機につなぐとこで、振り込め詐欺の電話を自動拒否できます。電話を受けなければ詐欺に遭うこともない。発送は単純だけれど、今まで誰もその対策に手を付けてこなかった。四年前に開発して以来、今では十五万人が利用するサービスです。
 生まれ育ったのは豊田市越戸町です。父はアマチュア無線が趣味で、実家には大きなアンテナや何台もの無線機がありました。



小6で無線免許

 幼かった私も自然と無線機を触るようになり、小学六年でアマ無線の免許を取得しました。とにかく機械をいじるのが楽しい。身近な工具を使い、壊れた置き時計を修理することもありました。そんな幼少期の体験を通して、技術者を目指すようになったのかもしれません。  会社経営者としても、幼いころの影響が大きいですね。
 地元で祖父が左官業の会社を営んでいました。当時は今と違って左官の仕事が多く、経営は順調。祖父の姿を見て、幼いながらに「頑張れば稼げるんだ」と感じました。だから、私も会社を起こすという選択ができたのだと思います。
 豊田での中学、高校時代は音楽活動にはまり、ロックバンドを組んでいました。大学は理工学部に進んだけれど、ろくに通わないまま中退してしまい、インディーズでCDも出しました。  結局はバンドも続かなくて、二十二歳の時に名古屋市のIT企業で働き始めました。これが今の世界に入ったきっかけです。一年間勤めて独立し、企業のシステム開発を手掛けるようになりました。その中で生まれたのが振り込め詐欺の防止装置です。



警察からも提供

 発端は祖父が、たびたび詐欺の電話を受けていたことでした。「いつか被害に遭わないか心配」とぼやく母。ならば、私が対策を考えてみようと。会社経営の傍ら空いた時間に開発を進めました。
 詐欺に使われた電話番号をデータベース(DB)化し、かかってきた電話が該当すると自動拒否する仕組みをつくりました。自社で集めた情報のほか警視庁など全国の警察からも情報提供を受け、今では二万件以上の番号を登録しています。登録されてなくても、利用者が詐欺電話を受けたときに装置のボタンを押せばDBに蓄積・共有され、装置の精度は高まっていきます。
 今月十一日には装置のシステムを組み込んだ固定電話機がシャープから発売されます。普及に向けた大きな一歩です。十五万人の利用で満足せず、一千万人、二千万人と増やしたい。そうすればきっと詐欺は減る。空気のような、当たり前のサービスにすることが目標です。



取材を終えて

振り込め詐欺に使われる電話番号ろデータベース化し共有する。装置の発送は実に単純で分かりやすい。だが何より驚かされるのは、従業員二十五人の小さな会社でそれを実現してしまうところにある。名の通った大手企業でないのに、警察などから情報提供を受けるのは相当な苦労だったはずだ。  開発のヒントをくれた明田さんの祖父は、装置の発売一ヶ月前に病気で亡くなった。「これは絶対売れるぞ」。試作品を手にした祖父の言葉通り、装置は着実に普及している。



あきた・あつし

システム開発のベンチャー「トビラシステムズ」(名古屋市中区、従業員25人)社長。1980年12月、豊田市生まれ。猿投台中、豊田北高卒、名城大中退。IT企業勤務を経て独立し、前身の会社を2006年に設立した。11年発売の振り込め詐欺電話撃退装置「トビラフォン」で脚光を浴び、全国の自治体で普及に向けた実証実験が進む。月額200~400円で利用できる。岐阜県大垣市在住。





朝日新聞 日刊 2015年(平成27年)6月28日 日曜日



 

中日新聞 朝刊(三河版) 2015年(平成27年)9月7日 月曜日