7月4日、ウィルコムは『迷惑電話チェッカー』を新発売。これは自宅の固定電話回線に設置するだけで、振り込め詐欺や勧誘など、悪質な迷惑電話からの着信を自動で警告するものだ。迷惑電話情報をユーザー全体で共有するソーシャル機能を搭載しており、初めてかかってきた電話でも迷惑電話かどうかを判別することもできる。依然被害者が続出する振り込め詐欺などを防止する、画期的なシステムの誕生として期待が寄せられている。
『迷惑電話チェッカー』は、自宅の固定電話に専用アダプタを接続するだけの簡単接続。それ以外の設定も一切不要だ。ユーザーが唯一行わなければならない手続きは、ナンバーディスプレイに加入するだけである。
これだけで、着信した電話の危険度を音声と光の色分けで通知する。色分けは、チェッカーの手前部分のランプが光る仕組みだ。具体的には、次の通りである。
「赤」・・・・・ | 共有した迷惑番号リストに登録されている電話番号、または自らが「拒否ボタン」を押して着信の拒否を登録した電話番号。この場合、着信音は鳴らない。 |
「黄」・・・・・ | 公衆電話、または番号リストに登録していない電話番号。着信音は鳴る。 |
「青」・・・・・ | 家族や友人など、自分が登録した安全な電話番号。着信音は鳴る。 |
特に、犯罪に使われた番号や迷惑電話として登録された番号から電話がかかると「迷惑電話の恐れがあります!」と音声が流れ、赤いランプと共に警告する。これはユーザーが受話器を上げる衝動を抑えることに大きく役立つはずだ。
なお番号通知なしの場合は着信音が鳴る。しかし、非通知、公衆電話、表示圏外すべての場合において音声ガイドが警告を行ってくれるのが頼もしい。
同製品の最大の特徴は、全ユーザーが登録した迷惑電話番号のリストを共有するソーシャル機能がついていることだ。これはウィルコムと共同で開発をした、トビラシステムズ(本社 名古屋)が管理する迷惑電話データベースを提供することで、迷惑電話を未然に防ぐフィルターサービスが実現している。
特許を取得している迷惑電話データベースは、独自のシステムでブラックリストを作成。ブラックリストに登録されている電話番号ならば、初めての着信でも警告される。
既に警視庁からも迷惑電話リストが提供されており、常に約2万件の悪質な電話番号がアップデートしている。迷惑電話の相手先情報は、ユーザーが登録する度に随時増えていく可能性がある。また、今後は各県警や行政、消費生活センターなど各種機関とも協力関係を強化しようとしているため、ブラックリストの数が増加していくことは間違いない。なお、迷惑電話情報はウィルコム通信(PHS網)を利用して自動更新される。
『迷惑電話チェッカー』の利用料金は、月額700円(単体契約)。個人が登録する拒否番号の最大件数は300件だ。ここまでは他の企業でも迷惑電話登録機能を導入しており、決して珍しくはない。しかし、ソーシャル迷惑電話共有機能を備えているのは同製品だけだ。そして、この数は前述の通り現在で2万件を超えている。これはとても斬新であり、同時に大きな安心感を生んでいる。
発売と同日、ウィルコムとトビラシステムズは、東京都西東京市において実証実験を開始した。
これは西東京市において、『迷惑電話チェッカー』の設置を希望する60歳以上の高齢者がいる家庭(原則)を1000世帯募集し、配布するもの。そして集められた迷惑電話番号情報についてトビラシステムズが管理・更新することで、同製品の利便性がより向上することを目指している。実施期間は7月4日~9月30日までを予定しており、この結果発表も待たれるところだ。
これまでは、振り込め詐欺の被害防止策は、犯罪手口の公開を中心に一般の方々の防犯意識を高めることが中心だった。しかし、今回発売された『迷惑電話チェッカー』は物理的に迷惑電話をシャットアウトすることを可能にした斬新なシステムである。
開発担当者からは、
「一方的に侵入してくる、悪質な電話を止めることで、犯人側の動きを止めることが可能になります。」(明田 篤氏・トビラシステムズ社長)
「このシステムを通じて、今後も一層、民間と行政と警察が協力し合うことで、国民の安全・安心が守られるようにしていきたいと思っています」(山田聖人氏 ウィルコム マーケティング本部 商品企画部 端末企画課)
という強い意気込みが伝わってくる。
事実、振り込め詐欺の対策としてはもちろん、犯罪の立証が難しい勧誘商法などを電話の段階でシャットアウトできることは頼もしいの一言だ。特に高齢者の周囲には、隙あらば彼らの財産を狙おうとする卑劣で恥を知らない犯罪者たちがとぐろを巻いている。その大きな悪意から身を守るためには、やはり、それを的確にブロックするシステムが有効なのである。
もちろん、犯罪とその対策はイタチごっこであるため、今後のシステムの制度アップが何よりも求められる。その意味でも、まずは西東京市の実証実験の結果と、それがいかにフィードバックされるかも大いに注目したい。
ともあれ、犯罪は常に監視しなければならない。街頭では、その役割を防犯カメラというハードが担っている。つまり、街頭での人命を守るのが防犯カメラならば、家庭内の個人の資産を守るものは『迷惑電話チェッカー』。そのような期待を寄せたくなる、画期的な製品の登場に感じる。
日本の防犯・防災 (平成25年7月発行) 2013 夏号 Vol.14 /株式会社アイアンドシー出版事業部