「あ、赤だね。この電話には出ないんだ」
4月下旬、名古屋市郊外の一戸建てで一人暮らしをしている青木幸夫さん(78)は、電話機そばに置かれた機器が赤く光るのを確認すると、受話器を取らずにやり過ごした。機器に表示されていたのは、見知らぬ番号。「悪質な勧誘電話に、いちいち対応せずに済むので、本当に楽」
この機器は、振り込め詐欺や悪質な電話勧誘など迷惑電話の着信を自動的に拒否する「トビラフォン」。名古屋市のシステム開発会社「トビラシステムズ」が2011年に開発した。これまでに愛知県警が実証実験を実施。高齢者世帯への導入を検討している自治体もあり注目されている。
機器は、固定電話とインターネットにつないで使う。警察や消費生活センターの公表資料などに基づいて同社がデータベース化した悪質業者らの電話番号と、利用社宅に掛かった電話番号とを自動的に照合。合致すれば赤く光り、音も鳴らない。登録されていない番号は、そのまま着信するが、利用者の判断で拒否設定が可能だ。拒否した番号の情報は同社に送られ、同番号が多数寄せられるなどした場合、データベースに反映される。
警視庁が昨年実施した振り込め詐欺被害者318人の調査で、9割以上は「自分は大丈夫と思っていた」などと答えた。「以前、警察官の防犯指導を受けた」「高齢だが日常生活はしっかりしている」といった点についても過信しないよう呼びかけている。
読売新聞 2013年(平成25年)5月10日 金曜日